トリゴニコス・ミソス
儚げな印象のあるその美女の横には、ヘルメスやアポロンにも負けない、いやそれ以上に美しい少年が一人佇んでいた。

美名の中には小学生の頃のイデアの記憶しかない。

そのイメージのまま会いに来た美名にとっては大きなショックだった。

そこにいたのは紛れもなくイデアだった。

しかし、小学生の頃の面影を残してはいたが、五年の年月がイデアを大人へと成長させていた。

まるで奇跡のように美しいその少年は、今しっかり美名と太陽に目を向けていた。

「イデア君!」

「イデア!」

太陽と美名は同時に声を上げていた。

その二人の様子を見たエオスは、この上もないほど不快な顔をして二人をにらんだ。

「いきなり人の宮殿に押しかけてきて、挨拶もなしなの?」

「ごめんなさい、私は美名。彼は太陽です」

「美名に太陽……。あなたたち、いったい何しにここに来たのかしら?」

エオスは二人の名前に興味を示したように、問いかけてきた。
< 41 / 162 >

この作品をシェア

pagetop