ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 そうなると、もう。

 刹那は、まるで、レース中にピットインした、レーシングカーみたいだ。

 降りしきる桜の花びらが触れた、刹那の顔と髪と、服装がぱぱぱっと、整えられて。

 さささっと潮が引くみたいに、いなくなって行く彼専用のスタッフをわたしは、呆然と眺めていた。

 さすが、今日本で一、二を争うほどのイケメン実力派俳優。

 ダンディ・ライオンなんていうニックネームもある『獅子谷 刹那(ししたに せつな)』を支える人たち!

 一応、この映画の主演女優とはいえ。

 もともとの女優さんの代役で、本当に駆けだしのわたしとは、大違いだ。

 刹那の準備が完璧に終わってから、わたしの方は、ようやく始まる始末で。

 それを横で見ながら、刹那は、とても嫌そうな顔をして言った。

「やることなすこと、遅いヤツ!
 しかも、自分がセリフを間違えたくせに、みんなに謝りもしないなんて!」

 それは、わたしと。

 せいぜい、わたしの調子を見てくれている技術スタッフさんぐらいしか聞こえない声だったけれども。

 しっかり、バッチリわたしのココロにつき刺さる。

「あ……ごめ……っ!!
 いいえ、すみませんでしたっ!!」

 わたしだって、決して謝るのが嫌なわけじゃない。

 けれども。





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