ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 ……と思った時にはもう遅い。

 監督さんの不機嫌そうな『はい、カット~~!』なんて声と一緒に撮影が止まる。

 空から落ちて来たはずの桜の花びらは、降り止んだ。

 美術担当のスタッフが、何人も。

 魔女が乗って飛びそうな、大きな竹箒(たけぼうき)を手に手に持って、花びらをかたずけに取りかかる。

 他にも。

 他にも。

 撮影が止まって、カメラさんはもとより。

 音響さんやら、照明さんやらスタッフの人々が。

 それぞれ自分の機材を下ろしてため息をついた。

 うゎ、わたしっ……皆にすごく迷惑かけてる……!

 それが、本当に申し訳なくて。

 ごめんなさい!

 と、謝ろうと口を開きかけたとき。

 わたしの心に追い討ちをかける人がいた。

「……優菜。
 そろそろ俺から離れてくれる?
 あんた、女優にしては、規格外に重いんだけど?」

 なんて。

 監督さんよりもだいぶ不機嫌に聞こえる声は、もちろん刹那。

 わたしは慌てて、刹那から飛び離れた。

 とたんに。

 待ち構えていたメイクさん達が、刹那を取り囲んだ。

 そして、よってたかって、ぱたぱたと。

 たいして崩れているわけじゃない、刹那の撮影用のメイクを直してゆく。




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