VS~Honey~

田中が声を低くし、注意を促すと美紗は一瞬、表情を曇らせる。

斎藤先生はあれからすっかり大人しく、何かしてくるわけでもなかった。普通に教師として振る舞っているだけ。
諦めないなんて言ってたから、しばらく警戒していたが、美紗に変わったところもないし、何もないようだった。


「ありがとう、結衣。でも今はなにもないしきっと大丈夫だよ。でも結衣は鬼役なんだ?」

「うん。生徒会だからね。みんな頑張ってね」


田中は嬉しそうに笑った。
追われるよりは気が楽らしい。


「あ、晴紀。そろそろ時間だ。行かなきゃ」


時計を見ると仕事に行く時間だった。

ちらっと美紗を見る。

家で会えるとは言っても、正直もっと居たかった。
そんなこと言えないけど。



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