VS~Honey~
マネージャーが外に車を回してくれるとのことで、通用口玄関で陸と二人っきりになりホッと息をつく。
「お前は田中と上手く行ってるみたいだな」
二人なので素で話しかける。ただ声は押さえぎみだが。
「うん。幼なじみの関係よりもいいよ」
「へぇ、そっか」
「晴紀は? 告らないの」
陸はにやっと笑うが、そんなの出来たらとっくにしてる。
俺が帽子の隙間からジロリと睨むと陸は肩をすくめた。
「美紗ちゃんも鈍そうだからなぁ~。こっちから行かないとわからないと思うよ?」
「……かもな」
自分ではそれなりに攻めてるつもりなんだけどなんだかいつも困らせて終わっちまう。
あっちに免疫がないせいでもあるし、俺のアピールが中途半端でからかうだけでおわるせいでもある。
わかってはいるけど、そう上手くはいかないものだ。
すると陸が声を低くして真剣な声色になった。
「明日の全校レクもさ、気をつけた方がいいかもね」
「何を? 俺らのことなら毎年、写真禁止令が出てるだろ」
「違うよ、美紗ちゃんだよ。斎藤先生が鬼役でフリーだろ」
それに顔を強ばらせる。
そう。それはずっと気になっていた。
あれから何もしてこない斎藤先生だが、本当に諦めたか。
それとも。
「頑張れ」
俺が険しい顔をしていると、陸はポンと肩をたたいた。