オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「あれ、何?」

「死んじゃったお母さんがやってた、ピアノ教室なの」

「お母さん、ピアノの先生だったんだ?」

「うん」

「じゃあ、また――」


明日、学校で。


そして、できれば、夜も会おう……。


「送ってくれてありがとう」


はにかんだ微笑。


ほんとに、「いいこと」が起こったぜ。


踊り出したい気分で数歩進むと、


「香奈を送ってくれてありがとう」

「うわっ」


突然、隣りの家の門から、加納が現れた。


「ここ、私の家なの。あれは、まだ生きてる両親がやってる、写真館なの」


母屋の裏にある店舗を指差し、知りたくもない情報を押し付けてきた。


しかも、よくよく考えてみると、さっきのオレたちの会話になぞらえて。


加納響子、――恐るべし。

< 30 / 233 >

この作品をシェア

pagetop