とろけるチョコをあなたに
 言外に「お前は引っ込んでいろ」と言われてしまい、少々困ったが仕方がないので書斎の本でも読んでいることにした。

 箱に入っていたベルギー製のクーベルチュールチョコレートは下準備が少々面倒だが、うまくできればそこらの市販チョコなど軽く凌駕できる。

 何故そんな事を知っているのかと言えば、まだ母が健在だった頃に店に出す洋菓子作りを手伝わされていたからだ。

 特にバレンタインデーには来店した客に手作りチョコを茶菓子サービスとして提供していたのだが、それが大変好評で毎年バレンタインデーになると母の経営している喫茶店は一日中満席状態だった。

 そんな状況で母一人で作ったのでは数が足りるはずもなく、オレもチョコ作りに狩り出されていたと言う訳だ。

 そのおかげで基本的なチョコ菓子は大体作れるようになったし、わざわざ温度計を使わなくても下準備に最適な温度が解るようになってしまった。
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