とろけるチョコをあなたに
 箱から飛び出してきたのは大量の高級チョコレート。ラッピングされたものではなく、製菓用のチョコレートだった。

 チョコレートに紛れて『NAPOLEON』と銘打ったブランデーの瓶も転がり出てきた。

 ……これって確か五万円位する酒だったような。

 絵理は慌ててチョコレートをかき集め、ナポレオンの瓶を掴んであたふたと箱にしまいこんだ。

 絵理は息をつくと、オレに向き直り、厳かに告げた。

「見られてしまったからには仕方がない。陣。この事は他言無用ぞ」

「……たかがチョコで一体何を深刻になってるのか知らんが、別に言いふらしたりしねーよ。おおかた、バレンタインの手作り用だろ」

「……うむ」

 絵理は顔を真っ赤にして小さく頷いた。いつもの物怖じしない彼女からは考えられないほどの可愛い仕草で、思わずオレまで赤面しそうだった。

「しばし給湯室にこもって作業をする。私の作業が終わるまで、適当にくつろいでいてくれ」
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