とろけるチョコをあなたに
 絵理は呆然とオレの顔を眺めていたが、突如オレの背中に腕を回して抱きついた。思わぬ行動に心臓が早鐘のように鳴り、全身が熱くなっていく。

 背中に回した腕に一層力を込めた絵理はオレの胸に頬を寄せたまま沈痛な声で呟いた。

「不甲斐ない主ですまない。陣の心遣い、本当に感謝する。……ありがとう」

 引き寄せられるようにオレの腕が絵理の背中に回され、黒絹の髪を撫でた。

 身体の前面と腕から伝わる体温が全身を痺れさせ、彼女の事しか考えられなくなる。

 まずい。このままだとチョコ作りどころじゃなくなってしまいそうだ。

 オレは残った理性をフル動員して絵理から離れた。

 純粋は時としてひどく残酷だ。さっきの行為だって、親愛と感謝以外の感情は伴ってないのだろう。

 そして、それに気がつかないふりをして自分の感情のままに突っ走る事ができるほど、オレは子供でも大人でもなかった。
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