とろけるチョコをあなたに
 とはいえ、贈り物を無碍(むげ)に断って印象を悪くするのも得策ではないし、モテているという実感はそれはそれで気分がいいものだった。

 少なくとも昔のオレにとっては。

 なので貰える物は貰い、市販品は母への土産にして、手作りの品は人知れず処分してしまっていた。

 非道い男と言うなかれ。恋にかける女の情念というのは恐ろしく、適度な距離を保っていないと面倒な事になる。

 バレンタインが来ると幾分憂鬱な気分になるのも、この情念を様々な形でぶつけられるからだった。

 贅沢な悩みだと言われればそれまでなのだが。

 それに、そんな想いをぶつけてこられて嬉しい相手など、今はたった一人しかいないのだ。

 そして、そのたった一人から想いをぶつけられる可能性なんて皆無に等しい。

 こうした事情も相まって、バレンタインの話題を耳にするたびに溜息が出てくるのだった。
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