春風に流される
「牧村は就職なんだ?大学行かないの?」


「…んー、行かない。興味無い」


"興味無い"?


その言葉に妙に引っ掛かりがあったが、それ以上は聞いてはいけない気がした。


牧村は就職なんだ。


あんなに成績が良いのに勿体無い。


「どこ?地元?」


「……東京」


ボソリ、と手の内にある、コーヒーを見ながら呟いた。


「牧村は頑張ったんだぞ、必死で探して、何個も受けて…晴れて、東京に就職だ。どうしても東京が良かったんだよな、牧村?」


「せ、先生ってば!!」


担任が牧村の身の上話をベラベラと話したから、牧村は真っ赤になって怒り出した。


どうしても東京が良かったんだ?


確かに東京は利便性も良いし、心が踊るような事も沢山ありそうだしな。


腐れ縁でずっと同じクラスだったにしては、何にも知らなかったんだな、俺。


……いや、知ろうとしなかったのか?
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