エゴイズム。
黒く鉄臭い銃口が俺の動作を止めるように向けられている。

まるでその風景は謀洋画の一部分を観ている様で現実離れしている。

だが、俺らみたいな闇社会に蔓延る奴には結構な割合で遭遇することがある。

しかし、こんなに銃口を向けられたのは初めてだ。

｢あなたの肩に掛けいる物を私の方に投げてくださいな」

夏目は銃を右手で俺の方に銃口を向け、左手で手招きするように手首を上下に動かして催促している。

夏目が欲しがっているのは俺の右肩に掛けてある古臭いバッグだ、正確に言えばその中身の金のことだろう。

しかし、当たり前のことだが中身は空だ。

誰かも知らない奴に金をやる必要性はまるでなく、俺は募金するような律儀な人間でもない。

その空のバックを夏目に向けて投げる、バックは宙に舞い、俺と夏目の距離を線で繋ぐように弧を描いた。

見事にバックを受け止めた夏目はバックの軽さに眉を上げて不機嫌にバックを開き中身を確認して笑みを浮かべた。

｢あなた、私をなめているの??同じ闇社会の住人を侮辱してるわ」

そう俺に告げると夏目はくすりと笑った。

｢同じ職種なら分かるだろ??殺し屋は無駄なこと、利益にならないことはしない、スマートかつシンプルにこなすもんだ。これは明らかに無駄なことだ、俺に利益がない」

俺は夏目に向けて殺し屋の教訓を放った。




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