きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

*文久3年9月

「では、山南さん。これで失礼しますね。」


そう言いながら、私は山南さんの部屋を出た。


山南さんは7月に岩城升屋で起こった不逞浪士取締りの時に負った怪我が原因で最近では部屋での仕事が多くなっていた。


一日中、部屋に籠りっぱなしの時も多いので、私は気晴らしにと、お茶と甘味を持って、山南さんの部屋に行き、お喋りをするのが、ここ最近の日課となっていた。


「芹沢先生、どこ行かはったんか知らへん?」


明日の甘味は何にしようかなぁと考え込んでいたら急に声をかけられた。


「お梅さん・・・」


そこに居たのは最近、ここに通うようになったお梅さん。


お梅さんは元々は菱屋さんのお妾さんで、芹沢さんの所に代金の催促に来ていたのだけど、いつの間にか芹沢さんの愛妾となり、今は壬生村の中に住んでいて、よく屯所に通って来るようになったのだ。


お梅さんを否定するわけではないけど、私は苦手で正直、あまり関わりたくなかった。





< 138 / 187 >

この作品をシェア

pagetop