イジワルな俺様の秘密ライフ


1組の教室の扉に触れた瞬間、

ガラリと勢いよく扉が開き、考え事をしていた私は足を止める余裕すらなく、

出てこようとした人と思いっきりぶつかってしまった。



顔面を相手の胸板にぶつけたようで、

「わぶっ」

と我ながら可愛げのない声を出してしまった。

恥ずかしい。



相手はその声に笑うどころか、慌てて

「ごめん!」

と何度も謝罪を口にする。



「わ、私こそ……」


そう言って見上げた先にいたのは、

申し訳なさそうに眉尻を下げた、爽やかな男子生徒だった。


上背は多分海翔様くらいで、髪は少し短めで真っ黒。


浅黒い肌は何かスポーツをやっているのだろうと連想させる。


人懐っこい黒い瞳が、愛嬌のある柴犬を思い出させた。



「何アヤいじめてんの」

ひょこっと彼の後ろからナツが顔を出した。



「いじめてねーよ!」



心外だ、と言わんばかりの彼と、「どーだか」という顔をしたナツ。



知り合い……?



ナツが私の視線に気が付いて、彼を紹介してくれた。


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