最初で最後
ちょっと気まずかったのか、かなり遠慮して家の中に入っていく恵里。
まぁ、ねぇ…。
出張中なんて言われちゃちょいと気まずいかも。
でも、何やってるんだろ。聞いちゃいけない物なのかな。
こういうのって。

「…先輩のご両親て何やってるんですか?」

「親…?」

「うん」

1番最後に入ったあたしは少し小さめの声で聞いてみる。
先輩は、少し眉間に皺を寄せたけど、すぐにそれを解く。
一瞬だけやばいかな、とは思ったけれど。
先輩は笑ってくれた。少しばかり淋しそうな目で。

「親父はパイロットで、お袋はテレビ会社のスタッフだからめったに帰って来ない」

「…淋しくないんですか?」

「もう慣れた」

強がり。そう、言いたかったけど。
先輩が、またあの冷めた目をしていたから。
言うにも、言えなかった。言っちゃいけない。
そう思った。

「何か飲む?」
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