零~ZERO~
この言葉を一語一句、今でも忘れられない。

きっと、死ぬまで忘れないだろう。

あんなに優しかった詞音が…。変わってしまった。
2重人格みたいに。


言うならば、鋭く尖った大きな剣で心臓を一突きされた。と、いう感じか…。
どんな言葉も当てはまらない。

ずっと詞音を掴んでいた手が力無く、ほどけてしまった。


おばあさんが、詞音に、ご飯が出来たと呼ぶ。

また、
『帰って下さい。』
と敬語を使われた。
私と、おばあさんに、挟まれて相当苛々している様だった。

もう、私には何も出来ない。
仕事と家庭の事で手いっぱいで、私の事まで頭が回らないんだ。そう思った。


詞音は、最後にこう言った。
『今言えるのは、"あなた"の事は、友達としか見れない。』
無理矢理、絞り出した言葉に聞こえた。


私はその時、ある計算が働いた。
『…キスしてくれたら帰るから…お願い。』
『…友達同士は、そんな事しないよ。』
『そしたら、直ぐ帰るから…。』


愛の無いキス。

私は、詞音に情を移すつもりで、そう行動に出たのだ。
本当に、諦めの悪い私…。


だけど、それが、2人の最後のキスになってしまった。


『じゃあ…突然来てごめんね。
疲れてるのに。
おばあさんにも謝っておいて下さい。
それじゃあ…。』

詞音は、何も言わない。

家のドアを閉めた。


私は、自分の足で歩いている感覚が無かった。

本当に終わってしまったの?

これから、どうすればいいの?
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