零~ZERO~
すぐに、その場を後に出来なくて、あの公園のベンチに座り込んで、寒いのも忘れて、気付いたら友達の薫に号泣しながら、電話をしていた。


薫は、同じ職場の、お姉さん的存在で、誰よりも頼れる、仕事も出来て、プライベートな詞音の事も、よく相談に乗っていてくれて、話しの聞き上手でアドバイスもくれる人だ。


『とにかく、深呼吸して。落ち着いて。』

薫は、今までの事、今起こった事を、ずっと黙って聞いてくれた。


『もう後ろは振り向かないで、前を見ようよ。
私も昔、同じ様な事あったよ。
だけど、ずっと同じ場所に居たって変わらないよ。時間はかかるかもしれないけど…。
そんな男、こっちから振っちゃいなよ!』


もう何十分話しただろう。
薫に話したら、少しだけ心が晴れた。


薫に、お礼を言って電話を切ると、呼吸の乱れも涙も、おさまっていた。

私は、それでも生きている。

寒いと感じた。


煙草を吸って、空を見上げたら、雲1つ無い、澄んだ空気の中に満月が居た。

とても美しかった。

思わず携帯に収めた。



あの満月を忘れる事は無い。

いつか自分の心も、あんな風にクリアになる事を願っていた。
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