零~ZERO~
解消。裏切り。
環境の変化で色々あったが、貴矢との生活にも大分慣れて来た様に感じ始めた頃。

ある事が起こった。



いつもの様に、貴矢が仕事から帰ってくるのを待っていた。

彼は、忙しい時は、22時~23時に帰って来る事もある。

それでも私は、体調が良い時は、一緒に夕食を食べる様にしていた。



貴矢が帰って来た。

いつもの様に、
『おかえり。』
『ただいま。』

でも彼は、いつもより苛々していると感じた。

私は、
『仕事で嫌な事でもあったの?』
聞いてみた。
『別に何も無いよ。少し疲れただけだよ。』

そう言って、貴矢は少し休むと言って、寝室に行ってしまった。


私は、そっとしておこう…と思い、リビングで大好きなアーティストのDVDを観始めた。



しばらくすると、貴矢が、
『音、大きいよ。』
と苛々した口調で言うので、ボリュームを下げた。



下げたつもりだったが、今度は、私がDVDを観ている後ろに、貴矢が黙って座っている。


私は、
『…何?』
『だから、五月蝿いから、ここに居るの。』




私の中で何かが壊れた。

仕事で疲れて、本当は嫌な事があったかもしれないのに、何も言わないから、それ以上何も聞かなかったのに、私に当たられていると感じた。



私は、
『訳分かんねぇ!』
と、TVを、ぶちっと切り、さっきまで貴矢が居た寝室へ走って行った。

『おい!待てよ!』
それに腹をたてた彼が追いかけてくる。


『何なんだよ!その態度は!』
『そっちこそ何なんだよ!』


貴矢は、私の胸ぐらと、髪の毛を引っ張った。
掴み合いになった。
けど、男に勝てる訳が無い。
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