視線の権利



はあ。


手を洗いながら息を吐く。

みんなテンション高い。
でも楽しいな。
彼氏探しっていうよりお友達になりたいな。みんなと。


綺麗な化粧室の大きな鏡を見ると、それ程お酒を飲んでないのに顔が赤く上気している。


化粧ポーチから油とり紙とコンパクトを出し、ちょっと崩れたメイクを整える。

アキノ、ありがとう……。

あの場に早く戻りたくて、化粧室のドアを開けた先に。



「キレイにしてきたねえ」


あの、名前は……あのゾクリとした感覚で忘れてしまった、部員の友人男性が廊下の壁に待ち構えるように寄りかかって

声をかけてきた。
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