[妖短]空の境界線を越えて
前を行く五十嵐は、いつも通りスッスッと歩いて行く。
そうすると、青い波紋や魚の模様の着物が五十嵐の脚に綺麗についてゆくのだ。

あの、微妙に目立つ歩き方はコレの為なのか。


「五十嵐って家だと浴衣なの?」
私が聞くと、五十嵐はちょっと振り返って、
「今は違うよ。客を呼んでおいて、失礼な格好できないだろ?」

そーなのか…。

「神山さんは、着物見るの初めてなんだね」
そう言って、くすりと笑う。

むうぅ。意外といじわるだ。


「ココだよ」

建物自体は古くもなく新しくもなく。
いたってフツーの民家。

カラカラと引き戸が音を立て、
「あぁ」
スニーカーとローファーが1つずつ、それ以外全部下駄とか和風のだ。

木の廊下に竹細工の天井。

何だろう。異世界みたいだ。
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