[妖短]空の境界線を越えて
なんで泣いてんだろ。

私こんなに泣き虫だったっけ?

五十嵐もいるのに。

学校でも、寮でも、泣いた事ないのに…



あ、
そうだった。

泣き虫だった。

家にいた時はよく泣いてたかも。


兄弟と喧嘩した時とか、
好きだったおもちゃが壊れた時とか、
怖くて夜、眠れない時とか。




五十嵐は何も言わない。
呆れてるかな?

あぁ。もう。恥とかどうでも良いや。

ふっきれたのか、その後はすらすらと出てくる。
まだ泣いてはいるけど。

「綿が、言うの。
今まで、耳を塞いでた事。

走っていれば良いのにって。
高跳びなんてやめたらって。

そうすると声が出ないの。

見越入道が向って来て、
どんどん大きくなっても声が出ないの」


涙がこぼれて何も見えない、
泣きすぎて喉がひきつる。

呼吸が苦しい。

そうだ。泣く時ってこんな感じだったっけ。
< 36 / 44 >

この作品をシェア

pagetop