あめとてるてる坊主

2)何があっても

 次の日、沙世ちゃんは何か言いたげだったけれど、私はそれに気づかないふりをした。

 いつものように挨拶をして、何も気にしていないふりをした。

 沙世ちゃんは、困ったように笑っていた。

 そんな顔させたいわけじゃないのに。

 けれど、それ以外の笑顔を向けてもらえるようにする方法を私は知らなかった。


 取り出した携帯でメールを開く。

【課外お疲れ様。またメールするよ。福永のこと、よろしく】

 彼のメールに書かれた沙世ちゃんの名字。

 嬉しいはずの初メールは、ただ私を悲しくさせた。

 意固地な私は、それに返信ができなかった。


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