あめとてるてる坊主

4) 憶病風

 言おうと思った。

 自分の中だけで終わる恋にしないために。

 私が一歩、踏み出すために。



 晴天だった。

 久しい青空はとても綺麗だ。

 けど、紫陽花には雨粒が似合うなと思う。

 私の家の近くの道路沿いには紫陽花が咲いていた。

 梅雨が来る度に、通学のたびに通るその道。

 雨というきらめきをまとった姿を知っているから、なんだか物足りない。

 だから、沙世ちゃんの「綺麗だね~」の言葉に「雨の日だともっと綺麗だよ」と返していた。

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