あめとてるてる坊主
 だから、彼が来たことに「おはよう」を言われるまで気付かなかった。

 だから、思わず見てしまった。

 雨が跳ねる水溜まりから、彼に顔を向けていた。

 やんわりと笑う彼に、私の心臓も跳ねた。

 「おはよう」は、今までで一番無様だったと思う。

 でも彼はそれを笑うことはなかった。

 今日もそれで終わるはずだった。

 昨日が唯一の例外で、今まで通り、彼のただの左隣になるはずだった。
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