本屋の花子〜恋をしたら読む本〜
「おっさん!ちょっと表に出てくれますか?」



動揺した花子は思わず「まっさん」を「おっさん」とよんでしまった。



「誰がおっさんやねん」


そう言って来たのはまっさんと大の仲良しな鮮魚売り場のチーフの鯛さん。



「失礼やろがっせっかく告白して貰ってんから」



不覚です花子の目から大きな涙が落ちました。


「何で泣いてるねん」



「鯛さんあっち行ってや。もう」


花子は次から次に零れて止まらない涙の理由が解らないよ。


「もういいですゅぅ」



そう言ってまっさんは早足で店を飛び出しました。




「小池ちゃん。早く追いかけてあげやほんまは皆知ってたんよまっさんが小池ちゃんに告白する事。泣いてたらいかん!」




そう言って皆に店から押し出された花子。



まっさんの姿はありません。



なかなか涙が止まらない花子。


オイオイと声を上げて夜の繁華街を恥ずかしいと思いながら、まっさんを探して歩きました。



「花子ちゃん。どいたぁ?」



声に振り向くと本屋の常連様なタクシー運転手の柴田さんが運転席から顔を出していました。


「探しものが見つからんねん」


「そっかぁ。泣きなや綺麗な顔が台無しなっとうけん早く見つかるといいのっ」



柴田さんはそう言ってから一枚のメモを花子に渡しました。



「がんばりや」



花子はやっと涙を止める気持ちになりましたよ。


「柴田さん。今日の花子の顔忘れてや」



「見てないから」


にっこり微笑みそう言って柴田さんのタクシーは走り去って行きました。


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