カナリアンソウル
家の前に来たは良いけど、どうして良いかわからずにいた。

「誰〜?俺ん家に用事でも…」

寝巻のような物を着た人が、ボサボサの頭をかきながら歩いて来る。

「貴――大丈夫なの?」

貴はビックリして、誰?って顔してる。

「お見舞いにきたんだけどっ」

私は貴に案内され、家の中にお邪魔して、部屋に入った。

「その辺テキトーに座って?」

貴は私の顔をチラチラ見ながら、テーブルの上に置いてあったペンやらノートやらを、急いで横のテレビの付いた棚に閉まった。

「貴の好きなリンゴ買ったの。台所借りたいんだけど、親は?」

「今仕事でいないから自由に使って大丈夫だよ。けど、急に来られたら照れるわっ!」

貴の額には凄い汗。

本当に大丈夫なのかな…

「貴、横になる?」

「ごめん…大丈夫、だから…」

まだ苦しそうだし、顔色も良いとは言えない。

「どうして外なんかに出てっ―…」

「分かったから、このままギュってしてて…」

私は服を掴んだままの貴の背中を擦りながら、頭を包み込むようにそっと抱き締めた。

「赤ちゃんみたい」

「赤ちゃん……じゃ…ない…。あー、頭……グラグラするわ……」
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