カナリアンソウル
その反応を見た男は、つまらなそうにしてまた輪の中へと消えて行った。

「助けてって顔してたけど?」

「してません!」

「ふぅん。心の声が聞こえたのかな?」

貴の眼差しに押され、私は正直に答えた。

「まあ、少しはね」

待ち合わせは分かり易く地元の駅に午後八時、迎えに来てくれるらしい先輩の車を待った。

およそ三十分待って、私の髪をクルクルいじる貴の手が急に止まった。

何かと思い見上げると、私と目が合った瞬間、貴はゆっくりと正面を指差した。

「「えっ!」」

車の運転席から手を振る人を見たときの、私と貴の驚いた一声。

「どーした?」

「随分ビックリしてるね?」

何のことかわからない卓人とひろみに、

「こないだ、公園で会った……」

と正面に顔を向けたまま、貴は前髪を掻き上げた。

「もしかして、あのときの集団が卓人の先輩達だったりするかもね……」

「大丈夫か?顔ヤバイけど。早く車乗ろうぜ」

騒然とする私と貴をよそに、楽しそうに車のドアを開け、ひろみを先に乗せる卓人。

「ほら、そこの二人も早く乗って乗って!」

運転席から顔を出す男は、手で早く乗れと合図してきた。
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