記憶 ―夢幻の森―


……何の話だ…?


『……分かった…。』

『また、すぐに逢えるよ…!』


わけの分からない2人の会話。
俺の胸に不安が過る。


「何を話しているんだ!?」

俺が、宙に向かって声をあらげた時だった。



『…キース。』

その声は上からではなく、後ろから聞こえた。


「アズ…!?」


存在出来ない世界に、無理矢理に体をねじ込んだ…
そんなかんじだ。

俺の目に映る彼の体は、所々掠れたり、霞んだり、歪んだり…

それでも笑顔だった。


『…俺も、お前も時間がないんだ…悪いな。』

俺には、さっぱり事情が分からない。


彼は俺に向かって、
突進してきた。


「――アズ!?」

…止まる気は、ないらしい。


『――許せッ、キース!!またどこかで逢おう!』


「……アズっ…!?」


彼は、その速度を緩めないまま、俺に体当たりした。
俺の体は扉へと吹っ飛ぶ。

なんせ、今の俺は少年の体だ。
容易に吹っ飛んだ。

宙を舞う。

音も無き、白い世界。



『…いってらっしゃい、少年キース…』


そうアイリの声だけが、鮮明に俺の耳に届く。


俺は、そうして

『扉』をくぐった……


< 12 / 221 >

この作品をシェア

pagetop