狼さんの好きな人
やっぱり、そう考えるのは俺だけなのかな。


「そっか…。なら、いいんだ。」


「直也…」


「何?」


「お前の考えは、わからなくもない…。でも、ひよりをひよこに見立てたって、ひよこにはなれない…。ひよりでしかないんだよ。もう、ひよこはいないんだよ…」


「…そうだね。俺、部屋にいるから。何かあったら、呼びに来て。」


「…あぁ。」


枢は、“ひよこは死んだ”って受け入れてるんだね…


俺は、できないよ。


ひよこが死んで9年…


ひよこの最期を看取ったのに…


この手で、泣きながらひよこの遺骨を枢と一緒に箸で骨壷に納めたのに…


未だに、ひよこの死を受け入れられない。


お嬢とひよこは、別人なんだって頭では理解してるつもり。


だけど…


心の奥底では、ひよことお嬢は同一人物じゃないかって思ってる自分がいる。


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