MY☆FAVORITE
茶色い子犬はたちまち近所のアイドルとなった。
人懐っこく誰にでも尻尾をフリフリ、そして全く吠えないのだ。
細い路地に面した庭、いつしか少し離れた所に住むお婆さんが毎日勝手にチクワやら揚げ物やらを持って来ては与えていた為、犬はドッグフードを食べなくなってしまった。
さすがにこれはいけないだろうと考えた母は、何時に現われるかわからないお婆さんを庭で待ち、可愛がってくれるのは嬉しいがご飯を食べなくなってしまい困るので、あげる量と回数を減らしてくれるよう頼んだのだった。
その後はそのお婆さんが亡くなるまで、毎日散歩がてら犬に会いに来て、週に2度くらいチクワ等を犬にくれていた。
たぶんこのお婆さんは一番犬が懐いた他人だったと思う。