フォトグラフ
★ one scene 『始まりのシャッター』
「哲哉(てつや)~あ!
やったよ!オレっ!!」
『はぁ?』
「仕事だよ!
そんなにギャラは出ないけど、まだオレ新米だし、ちゃんとした仕事がくるだけ全然ましだし!」
『國(くに)、
うるさい。落ちつけ。』
哲哉にそう言われてハッとした俺は、持っていたケータイをあぐらをかいた膝の上に置き、ふぅ、とゆっくり深呼吸した。
少し落ち着いた俺はまたケータイを持ち耳に当てた。
「ワリィ、ワリィ。
余りの嬉しさに興奮しちゃったよ。」
ハハっと笑いながら言うと、俺の幼なじみであり、親友である哲哉はそんな俺の行動は慣れっこだと言うように、ハッと鼻で笑ってきた。
『いや、いいけど。
ところで、仕事ってどんなのなんだ?』
「それがさ!
なんかホームページとかに、ちっこい画像ってよくあんじゃん?
画材っていうの?
そのモデルなんだけど、その人もそれで稼いでる訳じゃないからあんまギャラは出ないんだ~。
でも、何枚も撮るらしいし、
練習には持ってこいだと思うんだ!」
哲也が目の前にいる訳じゃないのについつい体を乗り出してしまう。
だってホントに嬉しいんだ。
今まで雑用みたいなのばっかりさせられて、たまにほんの簡単なモデルが出来ても結局使われなかったり、駄目出しばっかされたり、ギャラが出なかったり…。
まぁ今はギャラは少なくても良いんだけど、交通費とか何かとかさむし、高校の授業だってある。
ごく普通の公立であるうちの高校で、チョイ役のモデルやって、無給で学校休んでましたとかシャレにならない、マジで。
親もモデル自体あんまり良く思ってないみたいだし、
高校生活に支障がでるなら止めさせるとまでのたまったから、
なんとかやりくりして通っている。
そんな生活の中で、今回の仕事は、少なくてもギャラは出る上に、交通費も出るし、
学校の時間を考えてスケジュールを組んでくれているという、今までの仕事の中で最高の条件だった。