フォトグラフ
ふいに横から声がして、ビクッとしてしまったが、
恐る恐る顔に当てていた手をずらし、声がした方向を向いて見た。
「転(こ)けたの?」
自分と同じぐらいの男の子だった。
片手に虫取り網をもち肩から虫かごを下げている。
ひっくひっくと言いながら、皐月と男の子の目が合い、見つめ合った。
自分の事を心配してくれているだろう男の子に安心し、嗚咽(おえつ)が収まってきて、話せた。
「お家(うち)どこかわかんなくなっちゃったの…。」
言い終わるとまた悲しくなってきてまた涙が出た。
そんな皐月に男の子は頭をなでなでしてあげた。
「どんなお家?」
首を傾げながら男の子が聞く。
「白くて、庭にお花がいっぱいあって…、ライオンさんの石もある…。」
皐月は自分の家を必死に思い出しながら答えた。
ライオンさんの石とは、ライオンの形をした像のことだ。
「ああ~!!
僕知ってるよ~!ライオンがガオーってしてるトコだぁ!」
男の子が急に大きな声をだし、しかも自分の家を知っていると言ったので、ビックリしたが、
希望が見えてきて、
「ホントに!?」
と、男の子に詰め寄った。
顔が近くなり、男の子は真っ赤になったが、皐月のあまりに必死に顔に、目を逸らすことは出来なかった。
皐月を安心させようと、へにゃっとした顔で、
「うん、知ってるよ。大きなお家だよね。連れていってあげる。」
と笑いかけた。