フォトグラフ
違う通りに入るたび感動した。
今まで知らなかった事を知るたび自分の世界が広がっていく。
蟻の行列や、道端に花が咲いているだけで立ち止まり、
自分が満足するまで眺め、満足したら進む。
そんな事を繰り返しているうちに、どんどん家から離れていったようだ。
自分がどれだけ進み、時間がどれぐらいたち、自分がどこにいるのか全く分からなくなってしまった。
焦って後ろを振り向いたが、今まで進んできたはずなのに全く知らない道のように見える。
「どうしよう……。」
皐月は途方にくれ、顔を歪めた。
さっきの角をどちらから曲がってきたのかさえ分からない。
花なんかいくらでも咲いているし、蟻は小さくて目印にならない。
どうしよう、どうしようとパニックになりながら、走り出した。
合っているのか間違っているのかなんて気にせず走り回った。
しかしいつまでたっても自分の家は見えなかった。
走り疲れた女の子はその場にしゃがみこんで泣き出した。
周りの大人な達は泣き声に気づいたが、
話しかけるタイミングを掴もうとしているのか、厄介事に巻き込まれたくないのか、
なかなか皐月には近づかなかった。
うわ~んと泣く皐月。
「大丈夫?どっか痛い?」