囚われの姫君

校舎から少し離れた野球部の部室の裏。

野球部だった彼の思い出の場所。

「えっと…」

先に口を開いたのはあたし。

彼は背中を向けている。

風になびいた髪。

隙間から見えたのは真っ赤になった耳。

可愛いな…

「1年のときから好きでした!」

突然口を開いた彼。

あたしは今、告られている…?

「それで俺と付き合ってくれないですか?」

まだ後ろを向いたままの彼。

耳は更に赤くなっていた。

「あたしも好きだよ。こっち向いてくれたら付き合おう?」

ゆっくりと振り向く彼。

たぶんあたしも同じくらい真っ赤だよ。

「やったあ!」

叫び声と共にそっとあたしの手をとってくれた。

春の空だけがあたしたちを見守っていた…
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