気まぐれ猫
嫌い?
 「ゆうちゃん……ね」
「今そうやって声かけてみれば?」
 宏樹が笑いを堪えながら言う。
「他人事だと思って」
「悪い悪い。でもさ、隣のベッドに入院してた子の妹って言ったんだよな?」
 確かに。
 でも俺は、その仲の良かった子(猫だとは気付かなかったが)の事は若干覚えてはいるが、お兄さんの事はほとんど覚えていない。
 「でも、三崎に兄貴がいたのは確かだ。中学の時も学校が終わってから兄貴のお見舞いばかり行っていたらしいから」
 ってことは、ほとんど学校には行ってないのか。
「にしても祐輔。ずいぶん詳しいね」
「まさか……!」
「違う!俺は中学で生徒会に入っていたんだ。それで、部活登録で大体の人は把握していたが、あいつは三年間一度も部活には入らなかったからな。それに三年になってからはクラスも同じだった」
 なんだ、と二人はなんだかつまらなそうだ。
 でも俺はこんな探るような真似をして、何がしたいんだれう。
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