風のおとしもの。
「小鳥遊、今日は急ぐぞ」
「ぅえっ」
「早くしろ」
「ぁ、はいっ」
村井君に急かされ、適当に教材を詰め込む。
「よし、行くぞ」
「はっ、はい」
「…おじさん、忙しいの?」
立ち上がると同時に、佳代さんの顔が上がる。
…久しぶりに声を聞いた気がします。
「……まぁな。ほら来い」
「わっ」
じれったかったのか、村井君に腕を引かれてしまう。
保健室に連れていってもらって以来です。
ちらっと佳代さんを見ると、切なげな目をしていた気がする。
「悪いな、親父が忙しいみたいで、手伝いに行くことになった」
「それは大変です」
「ま、ここまで来ればいいだろ」
下駄箱まで来ると、村井君は急ぐ足を止めた。
「悪ぃけど今日は別々な」
「わかりました」
私は走るの遅いし、邪魔だもんね。
村井君の背中に別れを告げると、不意に歩みを止めくるりと振り返った。
「高見たちに捕まる前に帰れよ?」
「ぇ…」
「そんじゃな」
忠告すると、ふっと微笑んだ。
村井君は今度こそ踵を返し、急ぎ足で帰って行った。