地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ


「……冗談はやめて下さい。いくら貴女が令嬢でも、簡単に婚約なんて出来ません」


多少動揺しながら、それでもハッキリと言った。



「大丈夫ですわ。陸さんは必ずわたくしと婚約して下さいますから……」


………どうして確信出来る?


「言っておきますが、僕は彼女と別れる気はさらさらありませんので。他の方をあたって下さい」




「…………別れないならば、“別れてもらう”だけですよ」



ボソッと呟いた言葉は、その時の俺には聞こえていなかった。





そう――……


この時から、始まってたんだ。



『……っ……杏っ!!』



何度呼び掛けても、手も声も届かない。


一生……触れることも出来ない。




俺が毎晩見る悪夢が現実へとなる


最悪のカウントダウンが―…


この時から始まっていた。
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