HEMLOCK‐ヘムロック‐
 呼吸は乱れており、喉も嫌にカラカラだった。しかも時刻はまだ朝の5時半だ。

もうこの夢は数え切れない程繰り返し見ているが、いつも目覚めは界にとって悲惨だった。

 界は嫌な汗を流す為、シャワーを浴びる事にした。
紺の寝間着を脱ぎながら廊下を渡り、脱衣所へ。


シャー……


 オフィスビルの4階に無理やり設置したバスルームのシャワーは、水圧も低いが、冷水からお湯に切り替わるのも時間を要する。

 構わず水に打たれながらここ1週間の事を界は振り返っていた。



 界と盟が任意同行で連れて行かれた次の日、鞠 あさみ こと本名、篠原 亜佐美は「麻薬を所持している」と自ら警察に自首した。

 芸能人・鞠 あさみの麻薬所持とマネージャー豊島 一哉の死は、世間とマスコミの恰好のおやつとなってしまった。

 しかも悪いネタはそれだけではなく、あさみの家から発見された「HEMLOCK」がまだ日本どころか、外国でも出回っていない謎のクスリということが判明したのだ。

その為、このクスリを麻薬として扱うべきかどうか、今日本中の薬剤師や専門家が一斉に審議している。

今や女子高生ですら、鞠 あさみ、豊島 一哉、そして「HEMLOCK」の話題を口にする様になってしまった。

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