HEMLOCK‐ヘムロック‐
「界、私は探偵をやっている。養子になるならやり方を教えてやるぞ」
それが、界に黒菱の養子に入る決意をさせた言葉だった。
ある意味これは契約だったのだ。
界はとにかく一心不乱に勉強した。トラウマによる悲しみや不安に陥る間もないくらい、若い脳はスポンジの様に知識を吸収していった。
界にはありがたい事だったであろう。
そしてこの頃から灰仁も一心不乱に何かを調べていた。
そう。彼も言葉は厳しくとも、界を慈しみ、愛していたのだ。
そして深い闇に踏み込んでしまったのだ。
1年後。
それは突然の事であった。灰仁がもう1人養子を迎えると界と礼二に告げたのだ。
正式な家族となる前に兄弟は、施設でその子と面会する手筈となった。
自分が来る時の礼二の気持ちもこんなカンジだったのだろうか。と界は緊張していた。
自分の面接の時は、どんな事考えていたっけ?
そんな思考と同時に、界の頭にはある疑問が浮かんでいた。
単純に、何故、灰仁はまた養子を取ろうとしているのか。ただその子を気に入っただけとは思えない。