HEMLOCK‐ヘムロック‐
　自分も養子であるからこそ、界はその辺の事情に敏感になっていたのだ。


「本日はありがとうございます。黒菱様。息子さん達はメイと会うのは初めてですよね」


　施設の院長らしき人が灰仁とそんな挨拶を交わしていると、ドアがノックされた。


「こんにちは。メイちゃんを連れてきました。さぁメイちゃん、入って」


　おばさんの後ろに隠れていた女の子がそろそろと部屋に入ってきた。


「こんにちは……」


　その時の“盟”はまだほんの９歳の少女だった。


「メイは……、実は外国から来たみたいでして、英語と中国語は話せるのですが、日本語は３年前にここに来てから学び始めました。
一応、日常会話に問題はありませんが、時々知らない日本語に不自由する事も……」

「構いませんよ。私も息子達も英語なら話せますから」


　灰仁と院長の会話が界には遠くに聞こえてた。ガンガンと彼の頭の中で早鐘が打つ様な感覚。

ただ、ただ、目の前の少女に衝撃を受けていた。


黒檀の髪と瞳。白い肌。３年達ち、かなり成長したが、はっきりと今でも覚えている。



そう。界とこの少女は以前にすでに出会っていたのだ。

　その時、界は灰仁が新たに養子を迎えようとしている理由を直感した。

灰仁が彼女を気に入ったのでは無い。気まぐれでも無い。



この女の子は界の――自分の両親が亡くなり、妹が失踪してしまった事件と関連しているのだ。と……。




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