HEMLOCK‐ヘムロック‐





 界が社長室を去った後。


「礼二くんがあんな事言うとはね。一体どうやって紅龍會に関わるつもりなの?」

「直接関わるつもりは無い。俺は俺で立場上、守らなければいけない物や人がたくさんいる」


 詠乃はすっかり乾いてシミが出来てるティーカップを片付けながら黙って聞いていたが。


「貴方こそ、どうして黙ってた?」

「え?」


礼二の台詞に動揺し、ソーサーを重ねる音が大きめに響いた。


「紅龍會の本拠地を知っているんだろう?」


 詠乃手は完全に止まった。換気扇の音がうるさく感じられる。


「貴方はさっきの会話で、界が中国に行く前提で話をしていた。界は自分から中国に行くとは一言も言っていない」

「だ……、って、界くんが、ご両親は中国で働いていたって、言ってたじゃない。だからよ」


 詠乃は取り繕ったが、バレバレだったし、最早礼二にそんな嘘をつく必要性も無い様に思えた。
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