HEMLOCK‐ヘムロック‐
 バスを降りて1時間は歩き続けただろうか。
周りの景色は空港の周辺とは一変して、露店や怪しげな飲食店が並ぶ市場の様になってきた。

 紅龍會に乗り込む為、およそ14年ぶりに上海に降り立った界がまず驚いたのが、中国の発展振りであった。

 元々上海は都市としては先進していたが、14年前とは比べ物にならない程交通面が整備され、発達していたし、ビルも驚く程増え、面影などは微塵も無かった。

しかしどちらかと言うと界が今歩いている地域は田舎と言うか、14年前の空気がまだ漂う感じはする。
ここまでバスが通っていただけでも十分ありがたい話しだが。

 露店が並ぶ道の片隅では、賭け事をして遊ぶ浮浪者の姿が所々目立つ。皆昼間から酒を煽っている。

 界は目当ての人物を捜していたが、当てはまる者がなかなか目につかない。


(ホントに居るんだろうな……!? 居なかったらイオの奴、吊してやる)








 界は1人で紅龍會に行くに当たって、事前に元紅龍會幹部のイオに様々な協力をしてもらっていた。
もちろんイオも合意の上でだ。

 イオが興信所に来てから3日経った日。
 界は盟と2人暮らししている自宅のマンションにイオを呼び出した。盟にも透にも泉にも内緒で。


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