HEMLOCK‐ヘムロック‐

「俺はお前を信用する事にした。完全には信じてねーけどな!」

「え~!? どっちだよソレ」




 リビングにある食卓テーブルに向かい合って掛けながら、界が話題の口火を切った。
 このテーブルに界と盟以外の者が腰掛けるのは、実はイオが初めてである。


「この3日間、実はお前は“盟の事が好き過ぎて紅龍會を裏切ってきたキチガイ色ボケ野郎”……を演じたスパイじゃないかと疑ってきた」

「うん、疑いたくなる理由は凄く解るけど、キチガイ色ボケ野郎は余計かな」

「だが、いくら紅龍會が盟を必要としていても、俺らに近づく手段はもっと色々あった筈だ。
そして決定的なのは『HEMLOCK』。お前はアレをバラまき過ぎた。組織としては、あの薬をマスコミに取り上げられるのは大きな痛手だったはず」

「さっすがカイくん♪ あれは俺の“紅龍會の手先じゃ無いよ~”ってアピールの為だって事も最終的に読み取ってくれたんだね」

 あんな目立つスパイがいたならば、俺が組織のボスだったらコンクリ詰めで東京湾に沈めてやる。と界は思った。


「で? まだ信じられないって点は?」


 イオが小首を傾げて尋ねた。男としてはムカつく仕草だが、イオの白い首筋はそれを許してしまうセクシーさがある。
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