恋に恋しました。
恋をしました








「―あの、本当にすみませんでした」

彼がコンビニから出てすぐ、私はお釣りを財布に戻すのも後回しにして慌てて追いかけた。

貴方に見惚れたからああなりました、なんていえるわけもなく、私はただどきどきしたまま彼にもう一度謝罪を口にする。
ていうか、多分単純に私は、彼にもう一度顔を合わせて欲しかった。

「…いや、いいし。別に。…まあもうあんな事ないように、」
「は、はい。ほんと、すみませんでした」

もうしつこいだろうからこれで終わりと謝罪を口にすれば、もうどうしようもないと私はこれで接点は終了―と内心溜息をつきつつ帰るかと顔を上げた。けど予想とは裏腹に彼はまだ声を掛けてくれた。

「…その雑誌」
「―え?」
「…一年前、4月に創刊されたL*R?」
「あ…はい。最新号です」
「―そう。…好きなんだ?」

その雑誌。
くい、と顎で漫画のことを言われ私はしどろもどろにこくりと頷く。

「…誰が好き?」
「え、と……小谷 永久先生、とか」
「…ふぅん。…で、感想は?」
「……は?」
「その先生の少女漫画の感想。俺は、知らないから」

―何を知らない?…ああ、少女漫画読んだ事ないからどういう感想抱くか、ってこと。
何でそんなこと聞くんだろう。胸のときめきは少し収まり、私は何で、という疑問の中素直に答える。
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