僕らのままで


 あたしの剣幕に驚いたのか、哲は刈り込んだ坊主頭を撫でながら、パチパチと瞬きをした。

「焼きりんご…食わねぇかな、と思ったんだけど…」

 そう言って、紙皿を差し出してくる。そこには、いかにも甘そうな蜜をたたえた焼きりんごが一つ、アルミホイルに包まれていた。


「お前、さっきから何も食ってないだろ」


 うそ…──。


 ──気付いてたんだ…。


 一瞬だけ、うれしくなった。


 だけど、ほんの一瞬だけ。


「気付いてんなら、仕事代わってよ!!あんたは食べてばっかりじゃないっ」

 気が付くと、自分の口からはそんな言葉が飛び出していた。

 言ってしまってから、プチ・後悔。

 ──『ありがとう』って、言えたらよ買ったのに。

 残念ながら、あたしはそんな可愛らしい性格じゃない。

 だから、いつも波流と比較される。

 女の子らしくて、可愛いくて清楚な波流は、気遣いもいい。男の子にとっては、理想のタイプ。
『守ってあげたくなる』ような…。


 それにひきかえ、あたしは。

 ちっとも女の子らしくなくて、言葉遣いは荒っぽくて。すぐ怒るし…。

『守ってあげたい』どころじゃない。むしろ、恐れられているような気がする──。


< 11 / 26 >

この作品をシェア

pagetop