僕らのままで
「───ごめんな」

 哲が、ポツッと言った。

 ええ、ええ、本当に。
その言葉が欲しかったわ。

 ────って、


「えええぇぇ!?」

 あたしは、大声をあげてしまった。

「てっ、てっ、哲…──もしかして今、謝ったのっ!?」

「そーだよ」
 憮然として、哲は言った。
「そんなに意外か?」

「意外だよっ。幼稚園の頃から、あたしに謝ったことなんて一度たりともなかったじゃないっ」

「そういやそうだな」

 哲は、あたしに手を貸して立たせようとする。

「俺、代わるよ。ちょっと休んでろ」


 ───何よ、その優しい言葉は。似合わないわよ。


 あたしには珍しくドギマギしていると、哲は力強い手であたしの腕を掴み、支えた。
「立てよ」


「あ…うん…」

 言われるままに、立ち上がる。けれど、ずっと座っていたせいか、腰が固まってしまったみたいに重い。

 おまけに、一瞬くらあっと目の前が見えなくなった。

「美亜?」
 哲が、あたしの名前を呼ぶ。
「大丈夫か?」
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