私に恋を教えてくれてありがとう【上】
華子はきょとんと口をすぼめ

話が佳境に近づいたことを察知し


『もうやめて』とばかりにちょっと呻いた。





そらは祐樹の話に耳をそばだてた。





「華子は、

 私たちがいなかった分の授業の板書を

 ノートに書いておいてくれたんだよ」




『ほほう、なかなかやるなぁ』とそらは


母をちらっと見てやった。


華子はむすっとしていたが、

そらが思うに少しばかり発色がよくなっていた。




「……
   だって、みんな大変でしょ

  別に祐樹さんにだけしたんじゃないもの」




華子はそらに弁解したが、

そらは母似のにやにやした期待顔で

続きを待っていた。


しかし、華子はこの環境に限界を感じた様で





「もう!お母さんは先に

     ごちそうさましちゃうからね!」




と、まだいつもの半分も食べていなかったが

席から立ち上がり、自分の分の食器だけ

流しに入れて

逃げるように洗濯をたたみにいってしまった。


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