私に恋を教えてくれてありがとう【上】
祐樹とそらは立ち去っていく華子を見送った。


すると、祐樹は

咳払いをして小声で続けてくれた。




「別に華子は俺を好きで
  
  そんなことをしていたんじゃないんだ

  いわゆる“華子の倫理”なんだ
 
  まぁ……

  そんなところに惹かれてしまったんだね」




「倫理かぁ……

  確かにそういうところあるかも」



父のグラスにビールを注いだ。


ありがとうと言って祐樹はそれを一気に飲みほした。



「……

 倫理は倫理でも

 あくまで“華子の”倫理なんだ。


 昔はそれがなかなかわからなくてね

 ……その華子の倫理のうちに

 


 “まずは自分の中で整理をする

     あわよくば答えをだす”




  というのがあってね


 どんな状況においてもそうだったんだ。

 
 それには父さん結構悩まされたんだ。




  ……今は全くそんなことしないのだけど」





父の悩みを知るなんて今までになかった。


なんて珍しい!とそらは


話を聞くのにますます身が入った。



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