氷の上のプリンセス
気づいた時には、先輩の顔は目の前にはなかった。
「泣かせるつもりはなかった。
だけど、本当に気をつけろよ。
今度は助けてやれないかもしれないからな。」
『はい…。』
何事もなかったように、私の頭をポンポンって叩く先輩の顔は、ものすごく優しくて…。
好きだなぁ…って思う。
叩かれた頭をさすりながら、照れてまた顔が赤くなる私。
今の今まで泣いてたのが嘘みたい。
「それにしても、こんな3年の校舎に何か用事でもあるのか?」
『はい。ちょっと、生徒指導室に呼び出されてて、向かうとこだったんです。』
「場所わかるか?」
『はい、教えてもらったんで大丈夫です。』
言った直後に気づいた。
分かんないって言って、先輩についてきてもらえば、ちょっとでも一緒にいられるのに……。
小悪魔能力は、私には向いてないかも。
「入学早々、何かやらかしたのかよ(笑)
危なっかしいから、ついてってやるよ。」
へっ!?
『ぜひお願いします!!』
即答してしまった私の回りには、パーッと見えない花が咲いた。
ニコニコになった私の顔を見て、先輩の目は細くなって笑っていた。
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