私に恋を教えてくれてありがとう【下】
彼はそのまま荒れた運転をし
この短い距離で二度も人をはねそうになった。
華子はそれを煩わしい目で見ていた。
……目にまで毒が廻ったか
-------いつもの穏やかな瞳は華子の中の生き物に既に奪われていた。
そんな自分への嫌悪はこれっぽっちもない。
寧(むし)ろこの形相を貫けることを称揚(しょうよう)したいとさえ思った。
そして景色は変わり、いつも華子を降ろす広い駐車場を持つコンビニへと駐車を済ませた。
彼はもう妻子の待つ家へ帰らなければ
更なる亀裂を土産にしていくことになるだろうし
そのヒビは華子へと続くということは目に見えている。
彼もその焦りを感じていない筈がない証拠に
窓ガラスに映る彼は
右腕にした重々しい時計を顔に近づける動作が目に付く。